2005年08月01日

東アジア 共同体めざして息長く

 欧州統合の歴史に学びながら、日本と中国、韓国、そして東南アジアの国々で緩やかな共同体をつくる。そんな目標を掲げた東アジア共同体の構想が、早くも揺らぎだした。

 ラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日中韓の外相会議は、共同体づくりを話し合う最初の首脳会議にインドとオーストラリア、ニュージーランドも招くことを決めた。

 首脳会議は12月にマレーシアで開かれる。参加するのは、当初想定されていた13カ国から16カ国に、域内の人口も20億人から30億人に膨れ上がる。

 参加国の拡大をもたらした最大の要因は、中国のアジアでの存在感が一段と増したことにある。

 経済の急成長を背に、中国は02年にASEAN側と自由貿易協定を含めて包括的な経済協力を進めることで合意した。農産物の一部を前倒しで自由化するなど積極的な経済外交を展開している。

 当初は様子見をしていた共同体構想についても、途中から前向きの姿勢に転じた。一時は「首脳会議は北京で」と名乗りを上げたほどだ。

 今回の会議で、ASEAN側が2回目の首脳会議の開催地も「ASEAN域内」と決めたのは、中国主導で話が進むことを警戒したからである。

 一方、日本政府はインドや豪州に参加を働きかけてきた。中国の存在感を薄めるのが狙いだ。それは、中国が共同体を米国に対抗する組織にしようともくろんでいる、と疑う米政府の意向に沿ったものでもあった。

 互いの思惑がぶつかり合い、共同体構想は船出の前から先行きが危ぶまれる事態になった。

 だが、もともとが遠大な構想だ。政治体制はもとより文化や宗教の面でも複雑で多様なのがアジアだ。10年や20年で実現できるようなものではない。ここは、どっしりと構えて事に当たりたい。

 日中韓とASEANの間では、外貨不足に陥った国への支援の枠組み作りや、各国の債券市場を育てる共同作業が始まっている。テロ防止や海賊対策、津波などの災害対策といった分野でも、協力の仕組みができつつある。

 こうした課題に取り組むことを通じて、まず緩やかな経済共同体を作り、その先に政治的な連携の道を探るという構想のはずだ。

 あせることはない。インドなど3カ国も仲間に加え、具体的な成果を積み重ねていくことだ。時間はかかっても、一緒に汗をかくことで、共同体の姿もおのずと浮かび上がってくるだろう。

 何とも気がかりなのは、日本の影が余りにも薄いことだ。

 町村外相は国連安保理の拡大決議案をめぐる根回しに追われ、ラオスには一度も足を運ばなかった。日本の代表団には冷ややかな視線が浴びせられた。

 足元のアジアを軽んじているようでは、常任理事国入りどころではない。

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義務教育費 分権の流れを見失うな

義務教育費の国庫負担を廃止し、税源を移すことで地方にすべて負担させるべきかどうか。中央教育審議会の義務教育特別部会は審議の中間報告をまとめ、後半の論議に入った。

 国庫負担の維持を求める多くの委員と、廃止すべきだとする地方団体の委員が折り合わず、報告書には両論が並んだ。今後、関係団体の意見を聴くなどして秋には答申をまとめ上げる予定だが、一本化は容易ではないだろう。

 公立小中学校の教職員の給与は、その半分を国が負担し、残りを都道府県が持っている。昨年度の国庫負担は2兆5千億円にのぼる。

 全国知事会などの地方団体は、国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」の一環として、この国庫負担分について税源と一緒に地方に移してほしいと求めてきた。これに文部科学省や自民党文教族などが強く反発し、税財政改革の最大の対立点になった。

 政府・与党からゲタを預けられたのが中教審である。しかし、対立がそのまま持ち込まれ、実のある論議ができたとは言い難い。

 地方団体の言い分はこうだ。

 国庫負担をなくしても地方交付税などで給与の原資は確保できる。それに税源が移れば、自治体に当事者の自覚が生まれる。住民の関心も高まり、地域や子どもの実情に合わせた学級の編成や教員の配置を工夫するようになるだろう。

 一方、他の委員は地方への不信を隠さなかった。国庫負担のほうが確実に予算が組まれ、教職員の給与に使われる。一般財源にしたら、自治体はほかに流用しかねないというのだ。

 確かにずさんな財政運営を批判された自治体もある。だからといって、地方に金を渡したらどこに消えるか分からないと言わんばかりの姿勢は、教育をめぐる地方分権の流れを無視した議論だ。

 戦前まで、教育は国の仕事として、政府が指揮、監督していた。しかし、戦後は自治体が教育の支え手とされ、教育委員会がつくられた。

 それでも、国は学習指導要領で教える内容を定め、法律で学級定員などを決める。さらに国庫負担制度を背景に、細かなことにも口をはさんできた。

 自治体の当事者意識は薄く、横並びの教育が全国にはびこっている。その一因として、政府が何ごとにつけ、口を出してきたことが挙げられるだろう。

 独自に少人数学級を実現し、授業日数を増やすなど、さまざまな試みが各地で芽生えている。自治体を励まして理念を実現する道をともに考えるのが、中教審の本来のあり方だろう。

 自治体が自らの負担と責任を踏まえて地域に根ざした教育行政を展開できるよう、国と地方の関係を見直し、改善を図る必要がある――。98年にこう答申したのは、ほかならぬ中教審だ。

 地方への不信にとらわれて、分権の流れを見失ってはならない。

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2005年07月31日

戦争を知る あちこち行きませんか

 靖国神社にある博物館「遊就館(ゆうしゅうかん)」の展示や見学ツアーについて、読者のさまざまな意見が本紙オピニオン面の「声」欄に寄せられている。

 「戦争を知らない子どもたちに靖国ツアーを行うことに賛成である」「非常に驚いたのは、どれもが戦果をたたえ、自衛のためと強調していたことでした」

 戦後60年の節目の夏である。小泉首相の靖国参拝が議論を巻き起こす中で、あの戦争のことをもう一度考えてみたいという思いが広がっているのだろう。靖国神社が投げかける戦争観をどう見るか。子どもにどう伝えるか。

 東京都町田市の青年会議所は、夏休みに小中学生を遊就館などに連れて行く「歴史探検ツアー」を計画している。市教育委員会が後援しているため、市民団体や教職員組合が「戦争を正当化する歴史観を後押しすることにつながる」と後援を撤回するよう申し入れた。

 じつは、私たちも1年余り前、「遊就館を訪れてみては」という社説を書いたことがある。遺書や遺品など3千点の展示品は、戦死した兵士たちの思いや戦争の悲惨さを語りかけてくる。

 しかし、多彩な展示の底流には、あの戦争は正しかったという明確な立場がある。戦争をする日本を世界がどう見ていたかという視点はうかがえない。靖国にまつられた人々を思うとともに、ここにはいない戦争の犠牲者たちにも思いを寄せたい。私たちはそう訴えた。

 重要なのは戦争を客観的に理解することだろう。この展示だけでは一方に偏ってしまう恐れがある。戦争を知らない世代には、戦争の実態や、なぜ戦争をしたのかを知るために、できるだけ多くの資料に接してもらいたいと思う。

 その気になれば、周囲にはたくさんの資料がある。たとえば横浜市の「あーすぷらざ」国際平和展示室では、神奈川県の空襲の映像を見られる。戦争体験を語る県民のインタビューや手記もある。

 「聖戦の美名のもと、強盗、放火、殺人を平然としてやる」と、中国の戦場での日本軍の姿をつづった人もいる。

 戦争に関する施設は、埼玉県平和資料館、川崎市平和館、立命館大学国際平和ミュージアム(京都市)、大阪国際平和センター(ピースおおさか)、広島平和記念資料館、長崎原爆資料館、沖縄県平和祈念資料館など全国にある。

 テレビ各局は8月にどっさりと、戦争を語る番組を用意している。映画館や舞台、書店をのぞくのもいい。インターネットにも戦争体験者の証言がある。

 戦争の時代を生き抜いた人たちは、いろいろな質問にこたえてくれるだろう。戦争をした米国やアジアの人たちがいたら、彼らの声も聞いてみるといい。

 戦争の悲惨さを世代を超えて伝えるために、実に多くの人々が努力している。勇気をふるって、つらい体験を語り継ぐ人々もいる。戦争の本質を知るために、できるだけたくさんのことに接したい。

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郵政民営化 法案を可決すべきだ

 郵政民営化法案が、参院本会議で可決されるかどうか。自民党内の攻防が大詰めを迎えている。18人が造反すれば否決される。そうなれば小泉首相は衆院を解散する構えだ。

 私たちは、郵政民営化を実現すべきだと主張してきた。週明けの審議を経て焦点は採決の行方に移る。改めてこの法案を今国会で可決するよう求めたい。

 郵便貯金と簡易保険の資金量は330兆円にのぼる。この巨大な「国営銀行」の仕組みがさまざまな非効率を生みだしてきた。「官から民へ」資金の流れを変え、日本経済の活力を取り戻す必要がある。これが民営化の眼目だ。

 いまの法案は反対論に妥協し、当初の理念から後退したのは事実だ。それでも民営化のメリットを発揮できる線は保たれている。これが否決され、民営化が頓挫したときのダメージは計り知れない。

 郵貯・簡保の巨大資金は、バブル崩壊後、相次ぐ景気対策で大量発行された国債の引き受け手の役割を担ってきた。郵政マネーという打ち出の小槌(こづち)が、無駄な公共事業や非効率な特殊法人の業務を支えてきた面がある。

 民営化することで資金がもっと効率的に運用される環境をつくり、同時に政府の野放図な財政運営を改めさせる。

 いまの郵政公社が経営的に立ち行かなくなるのは時間の問題だ。公社の屋台骨を支えているのは郵便貯金の収益だが、ゼロ金利で預金を集め、国債を中心に運用するという単純なビジネスモデルは通用しなくなる。電子メールの普及で、郵便事業の売り上げも落ちている。

 かつての国鉄のように、やがては税金で巨額の赤字を埋め、人員整理を強いられることになる公算が大きい。

 民営化によって、これまで免除されていた法人税などが収入として国庫に入る。将来、株の売却益も見込まれる。国鉄型の処理を迫られる場合と比べて、その違いは大きい。

 法案が否決されれば、影響は郵政問題にとどまらない。たとえ小泉政権が続いたとしても、政府系金融機関の統廃合や規制改革、国と地方との役割分担の見直しといった「構造改革」が弾みを失うことは間違いない。

 もちろん民営化するだけで即、バラ色の世界が開けるわけではない。民営化された会社の経営を成り立たせつつ、郵貯・簡保の巨額資金を市場を混乱させずに縮小させる。法案が成立したあとも多くの難題が待ち受けている。

 こうした難題やさまざまな懸念は、これからの民営化プロセスのなかでこそ、具体的に解消していく努力が求められる。民営化が動き出せば、新たな現実が見えてくる。3年ごとの見直しや「民業圧迫」への監視を通じて、政治が果たすべき役割は大きい。

 小泉首相の強引すぎる手法などに反発があるのは理解できる。政局への思惑もあろう。しかし、参議院が「良識の府」なら、大局的に判断すべき時だ。

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2005年07月30日

教科書採択 こんなやり方でいいのか

 東京都教育委員会は、来春から東京都立の中高一貫校などで使う歴史教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版を採択した。

 「つくる会」の教科書は4年前の検定で合格し、採択の対象となった。今回は2度目である。

 私たちは4年前の検定時も今回も、この教科書について、教室で使うにはふさわしくないと主張した。光と影のある近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が強すぎると考えるからだ。

 そのことは別にしても、都教委の採択のやり方は、きわめて問題が多いと言わざるを得ない。

 まず、歴史教科書の選定にあたって、とくに着目する点として(1)北朝鮮による拉致問題の扱い(2)日本の神話や伝承(3)竹島や尖閣諸島の扱い、を挙げて一覧表をつくったことだ。

 いずれも「つくる会」が力を入れている項目であり、8社の教科書の中では神話などの記述が最も多かった。

 歴史教科書は、日本の長い歴史というものを教科として学ぶための教材である。この3点が大事でないというつもりはない。しかし、何よりも重要な項目だろうか。

 都教委は、中高一貫の各校ごとに、歴史上の人物や文化遺産などの観点を加えた資料を作成し、点数化している。

 検定を重ねるようで点数化には賛成できないが、合計点が最も高いのは4校とも扶桑社以外の教科書だった。

 着目する3点の結果と調査資料の合計点が食い違えば、教育委員会は慎重に検討するのが当然だろう。だが、何の議論もないまま「つくる会」の扶桑社版が採択された。

 これでは、都教委は初めから扶桑社版の採択を決めていたのではないかと言われても仕方あるまい。

 なかでも見過ごせないのは、都教委が学校の意見を排除していることだ。

 教科書を使うのは教師と生徒である。教育は学校全体の取り組みであり、各校とも子どもたちに何を、どのように学習させるかを真剣に考えている。どんな教科書を使うかは保護者にとっても大きな関心事だ。

 教育委員会が一方的に教科書を選び、現場に押しつけるようなやり方では、学校や教師の意欲が低下しかねない。

 東京都教委は卒業式でも教員の処分を振りかざして日の丸・君が代を強制してきた。教科書採択でも同じような押しつけを繰り返すつもりだろうか。

 法律の上では教科書は各地の教育委員会が決めることになっている。それでも多くの教育委員会が学校や教師の声も参考にして決めてきた。それが子どもたちにとって有益だと判断したからだろう。

 教科書採択は、8月末の期限を控えてこれからというところが多い。教育現場の声にも耳を傾け、選んだ経緯は公表して丁寧に説明する。そうした採択であってほしいものだ。

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個人情報 楽天的ではいられない

 いま、どこかで、私の名前とクレジットカード番号を使って買い物をしている人がいるかもしれない。住所から下着のサイズまで知っている不審者が電話をかけてはこないか。

 考えるだけで背筋が寒くなる話だが、相次ぐ個人情報の流出は、そんな不安を抱かせる。

 1500万人が利用しているインターネット商店街「楽天市場」に出店している輸入商社から流出したとみられる個人情報は、住所、氏名、生年月日、電話番号にとどまらない。購入した製品のサイズや色などの情報、さらにクレジットカード番号なども含まれていた。

 この商店街を運営する楽天は、確認した流出は284件と言うが、これは取材で持ち込まれたデータのうち本物と確認できた数だという。瞬時に大量のコピーができる電子情報では、コンピューターに蓄えられたデータが丸ごと取られることも少なくない。輸入商社がこれまで楽天市場を通じて得た9万件余の顧客情報が漏れた恐れもある。

 この資料を入手した毎日新聞によると、流出した情報の買い手にはカードの不正請求を目的とした人がいたという。犯罪を誘発しかねない不始末だ。

 こうした手口で得た個人情報の悪用を、詐欺罪などで厳しく追及するだけでは済まない。個人情報を適正に管理すべき出店者やインターネット市場を運営、管理する楽天の責任も重い。

 楽天市場に出店している企業や個人は約1万3千を数える。利用者のなかには、楽天のみにカード情報を伝えたと思っている人は多いだろうが、買い物にカードを利用すると、その有効性を確認するために取引ごとに番号などの情報が出店者に送られている。

 今回漏れたのは、楽天に集まった出店者ごとの顧客データをまとめて、出店者側に渡したものだと見られる。そんなサービスまで必要なのか。流出の危険性もにらんで考え直してほしい。

 今年4月に全面施行された個人情報保護法では、個人情報を扱う業者に対して、管轄する大臣が取り扱いに関する報告を求められる。そこで法に触れる行為が見つかれば、是正を勧告できる。

 今度の問題で、経産相が楽天と出店者に報告を命じるのは当然だ。情報の扱いにどんな落ち度があったのか。再発を防ぐうえでも厳しく調べてもらいたい。

 カードが不正に使われても、請求書類が届いた段階で、買い物をしていない当人が支払いを拒めば損は免れる。しかし、誤って支払ってしまうと、返金にはカードを使っていないことを立証するなど厄介な手間がかかる。

 カード万能の時代だ。その程度の危険はいとわない人も多いだろう。しかし、こうした面倒を避けたいなら、インターネットで買い物をする際にも、着払いを利用するなど自衛策を講ずることが大切になってきた。カードの利便性にばかり目を奪われてはいられない。

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2005年07月29日

雨水会議 流すのはもったいない

 水不足かと思えば、集中豪雨。この夏の空模様も不安定だ。都市の住民は、遠くのダムの貯水率や町の川の水位に気をもむしかないのだろうか。

 いっそ身近に小さなダムを作れないか。そんな発想から、雨水利用の運動が東京都墨田区で始まったのは80年代初めのことだ。家庭に雨水タンクを置いたり、ビルに貯水槽を備えたりして、トイレや庭の散水に生かす。

 東海地方や四国、九州で断水が続いた94年夏の大渇水、水道管が壊れて消火や飲み水に困った95年の阪神大震災などがきっかけとなり、全国に広がった。

 雨水利用の連絡会に入る自治体は100を超え、3500施設に貯水槽が設けられた。海外からも注目され、8月1日から「雨水東京国際会議」が開かれる。

 家庭でも5万円ほどのタンクで0・2トンの雨水がためられる。洗濯やトイレなども含めると1人が1日に使う量の3分の2でしかないが、飲用だけなら最長で60日ほど持ちこたえられる。

 ごみを除くなどの手間がかかるし、お天気任せの弱点もある。それでも蛇口をひねるだけの水道と違って、水のありがたみが実感できるという人が多い。

 高松市は、下水道が行き渡ったことで要らなくなった浄化槽をタンクへ転用する支援をしている。節水呼びかけの一環だが、この10年ほどで1人あたりの水道使用量は4%減ったという。

 タンクが増えれば、相次ぐ都市水害への対策にも一役買える。これは、低地が多く、浸水騒ぎに悩まされてきた墨田区の出発点でもある。85年に完成した国技館が大規模施設の第1号。その後の江戸東京博物館など、周辺だけで貯水量は計4千トン。まさにミニダム群だ。

 都は環状7号線の地下に50万トンの貯水槽を設けて神田川などの洪水に備えている。ただ、1千億円の費用がかかり、次々に造るのは無理だ。ビルを新築した際にタンク設置を呼びかけ、あちこちで少しずつためるのが現実的な策だろう。

 これまで普及の難点は費用だった。戸建て住宅で集めた水をトイレなどで使うとなると、工事費は100万円以上になる。水道料が多少浮いても、経費を回収するには20年以上かかってしまう。

 参考にしたいのが太陽光発電だ。国が補助金などでてこ入れしたことで、10年間で発電量は50倍の113万キロワットと、世界最大に。費用は逆に3分の1になり、それが普及を促している。雨水利用でもこんな好循環をつくりたい。

 内閣府の世論調査では、回答者の7割が雨水などを利用したいとし、3割は多少の個人負担があってもいいと言う。ここは、下水道にかかる負担を軽くする効果を評価し、下水道料を安くするような工夫ができないものか。

 国際会議には、延べ2千人が参加し、水危機に直面するインドやバングラデシュのほか、先進地のドイツからも報告がある。天からの恵みをどう生かすか。一緒に考えてみよう。

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雨水会議 流すのはもったいない

 水不足かと思えば、集中豪雨。この夏の空模様も不安定だ。都市の住民は、遠くのダムの貯水率や町の川の水位に気をもむしかないのだろうか。

 いっそ身近に小さなダムを作れないか。そんな発想から、雨水利用の運動が東京都墨田区で始まったのは80年代初めのことだ。家庭に雨水タンクを置いたり、ビルに貯水槽を備えたりして、トイレや庭の散水に生かす。

 東海地方や四国、九州で断水が続いた94年夏の大渇水、水道管が壊れて消火や飲み水に困った95年の阪神大震災などがきっかけとなり、全国に広がった。

 雨水利用の連絡会に入る自治体は100を超え、3500施設に貯水槽が設けられた。海外からも注目され、8月1日から「雨水東京国際会議」が開かれる。

 家庭でも5万円ほどのタンクで0・2トンの雨水がためられる。洗濯やトイレなども含めると1人が1日に使う量の3分の2でしかないが、飲用だけなら最長で60日ほど持ちこたえられる。

 ごみを除くなどの手間がかかるし、お天気任せの弱点もある。それでも蛇口をひねるだけの水道と違って、水のありがたみが実感できるという人が多い。

 高松市は、下水道が行き渡ったことで要らなくなった浄化槽をタンクへ転用する支援をしている。節水呼びかけの一環だが、この10年ほどで1人あたりの水道使用量は4%減ったという。

 タンクが増えれば、相次ぐ都市水害への対策にも一役買える。これは、低地が多く、浸水騒ぎに悩まされてきた墨田区の出発点でもある。85年に完成した国技館が大規模施設の第1号。その後の江戸東京博物館など、周辺だけで貯水量は計4千トン。まさにミニダム群だ。

 都は環状7号線の地下に50万トンの貯水槽を設けて神田川などの洪水に備えている。ただ、1千億円の費用がかかり、次々に造るのは無理だ。ビルを新築した際にタンク設置を呼びかけ、あちこちで少しずつためるのが現実的な策だろう。

 これまで普及の難点は費用だった。戸建て住宅で集めた水をトイレなどで使うとなると、工事費は100万円以上になる。水道料が多少浮いても、経費を回収するには20年以上かかってしまう。

 参考にしたいのが太陽光発電だ。国が補助金などでてこ入れしたことで、10年間で発電量は50倍の113万キロワットと、世界最大に。費用は逆に3分の1になり、それが普及を促している。雨水利用でもこんな好循環をつくりたい。

 内閣府の世論調査では、回答者の7割が雨水などを利用したいとし、3割は多少の個人負担があってもいいと言う。ここは、下水道にかかる負担を軽くする効果を評価し、下水道料を安くするような工夫ができないものか。

 国際会議には、延べ2千人が参加し、水危機に直面するインドやバングラデシュのほか、先進地のドイツからも報告がある。天からの恵みをどう生かすか。一緒に考えてみよう。

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政治と金 今度は山崎拓氏ですか

 ひょんなところで自民党の山崎拓・元幹事長の名前が出てきた。日本歯科医師連盟(日歯連)の不正献金をめぐって、東京第二検察審査会が山崎氏を「起訴相当」と議決したのだ。

 驚いた人が多いだろう。日歯連の事件といえば、橋本龍太郎元首相への1億円ヤミ献金が焦点だったからだ。

 実は山崎氏の疑惑は昨年10月、衆院予算委員会で取り上げられたことがある。日歯連が数年前に、自民党議員に直接現金を渡したのに、党の政治資金団体「国民政治協会」が発行した領収書を受け取っていた、と民主党が追及した。うち3千万円が山崎氏に提供されたとして、山崎氏の証人喚問も要求した。

 日歯連関連で、いくつも浮かび上がった迂回(うかい)献金の実例のひとつと言われながら、いつのまにか忘れられた。

 旧橋本派の1億円事件で、村岡兼造元官房長官が政治資金規正法違反で起訴され、その裁判で政治と金の腐った関係が次々に明るみに出たからだ。

 たとえば、旧橋本派はパーティーの現金収入1億円余も、党からの資金1億2千万円も収支報告書に載せず、裏金にしていた。報告書では18億円を超える繰越金も、多くが使途不明になっている。

 同じ公判で、日歯連の元幹部は党を経由させる迂回献金を重ねてきたことを認めた。その際、山崎氏の事例と同様に、国民政治協会から領収書をもらったことも証言している。

 正しい収支報告を前提にする政治資金規正法を、あざ笑うような対応だ。

 朝日新聞は徹底した真相究明を求め、その前提として橋本元首相の国会への証人喚問を求めてきた。しかし、橋本氏は非公開の衆院政治倫理審査会に出ただけで、いまなお喚問は実現していない。

 そんななかで、山崎氏の疑惑は過去の話になりつつあった。

 その流れに、一般の有権者11人で構成する検察審査会が待ったをかけた。検察側が提出した資料を読んで、山崎氏は起訴されるべきだ、と判断したのだ。日歯連事件では、やはり東京第二検察審査会が橋本氏の「不起訴不当」を議決し、再捜査が続いている。

 私たちは、このような市民の感覚を大切にしたい。国会も敏感に応えて、政治と金の問題を問い直すべきだ。

 しかし、国会の現状はお寒い限りだ。

 一連の事件を機に与党がまとめた政治資金規正法の改正案は、迂回献金の存在すら認めていない。まるで裁判での証言などなかったかのようだ。透明性を高めるための「銀行振り込み」の義務づけも一部に限られ、残高証明も求めない。

 この甘い改正案は昨秋の臨時国会に民主党案とともに提出された。なのに審議は今月やっと始まったばかり。銀行振り込みの徹底など、厳しく修正しての成立など、今国会では望めそうにない。

 東京地裁は橋本氏らの証人採用を決めた。一国の政治を率いた人が、国会でなく裁判所で語ることになろうとは。

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2005年07月28日

シャトル再開 期待と不安の旅立ち

 バリバリと大気を引き裂く音を米フロリダの空にとどろかせ、スペースシャトル・ディスカバリーが旅立った。

 03年2月のコロンビアの惨事から2年半。ようやくの飛行再開だ。日本人宇宙飛行士の野口聡一さんにとっては初めての宇宙への旅である。

 打ち上げという最初の難所は無事に突破し、胸をなで下ろした。だが、機体や外部燃料タンクから落ちていく物体を監視カメラがとらえたのが気にかかる。打ち上げ時にはがれ落ちた断片が機体を傷つけたため、着陸直前に空中分解したコロンビアの事故は記憶に新しい。

 米航空宇宙局(NASA)は、今後の飛行に影響はないのか、分析を進めている。7人の乗組員が無事に戻れるよう万全を期してほしい。

 今回の飛行は、宇宙開発の将来にきわめて重い意味を持つ。日本も加わり、2010年の完成をめざしている国際宇宙ステーションの建設に、スペースシャトルは欠かせないからだ。ロシアの宇宙船では、日本がつくった実験室「きぼう」のような大きな荷物は運べない。

 一方で、スペースシャトルは安全性への懸念から、5年後には引退することが決まっている。81年にコロンビアが初飛行してからすでに四半世紀。作られた5機のうち2機が事故で失われた。

 ディスカバリーが初めて宇宙に行ったのは84年で、今ある3機では最も古い。最新の技術を駆使して手を加えながら、飛ばしているのが現状だ。

 残された時間は長くない。できるだけ早く安全な飛行を再開し、宇宙ステーションを完成させる。これが、老いたスペースシャトルに課せられた任務だ。

 老朽化との関係は明らかでないが、今度の打ち上げも原因不明の異常に悩まされた。当初予定された打ち上げでは、燃料タンクの四つのセンサーの一つに異常が見つかり、直前で延期された。その後、正常に働くようになったものの、異常の原因は詰め切れなかった。

 それでも安全は保たれるというのがNASAの結論だった。専門家の判断を尊重するしかないが、先を急いで無理をすれば、スペースシャトルそのものに終止符を打つことにもなりかねない。

 安全の確保に全力を尽くしてこそ、社会の信頼が得られる。しかし同時に、宇宙開発ではある程度のリスクが避けられないのも事実だ。

 野口さんへの期待も大きい。安全度を高めるため、機体の損傷を宇宙で修理する実験は、飛行の大きな目的の一つだ。リーダーとして飛行士を率いる野口さんは、宇宙服での船外活動も担当する。

 国際宇宙ステーションの部品を交換する仕事もある。2週間ほどの飛行では、今後の計画の成否を決めるような任務が目白押しだ。

 野口さんは、そのために通常の10倍もの時間をかけて訓練してきたという。思う存分活躍し、いつも通りの笑顔で地上に戻ってきてもらいたい。

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